経理マンでもFIREしたい

〜とあるアラフィフ経理マンの早期退職を目指す日常〜

四半期報告書(第1及び第3四半期)廃止に思う

本日ちらりと記事を見かけたので、本日はこの話題にします。

私は現在開示とは関係ない企業で働いておりますので、情報に疎くなっておりましたが、2024年度から第1・第3四半期報告書が廃止されることが昨年11月にようやく決定されたようですね。私が前職のうちから話に出ており待ち望んでおりましたが、結局法案が可決される前に転職をしてしまいました。私は個人投資家であり経理マンでもあるので、両方のことをある程度知っている立場としての考え方を記載したいと思います。

結論から端的に言ってしまうと、第1・第3四半期報告書は意味がないと考えております。皆さんは決算短信と四半期報告書を見比べたことはあるでしょうか。殆ど内容が同じである会社が大半です(或いは、決算短信は簡略化しているが、別途四半期報告書より内容を充実させた決算発表資料を開示している会社がある)。実務側としては、似たようなものを年に3回も作らされるのは、まったくもって迷惑な話でした。投資家側としても、第1・第3四半期報告書はまず見ません。しかし、書類としては異なる部分があるのと、一部の情報や書き方が異なるため、単純にコピーもできず、作成の手間ばかりがかかるものでした。なお、第2四半期報告書は、株主の状況が掲載されており、決算短信には掲載されていないので、こちらは使用することがあります。

もう一つ、大きく影響を受ける可能性がある点があります。それは会計監査です。決算短信は会計監査の対象外ですが(表紙の裏に記載あり)、四半期報告書は会計監査の対象です(最後のほうに監査報告書が記載)。つまり、2024年度以降は、第1・第3四半期は会計士のチェックの入らない決算数値が公表されることになります。・・・と書きましたが、実際のところは会計士の関与はゼロにはならないでしょう。なぜなら、例えば第2四半期の監査で第1四半期期間の誤りが見つけられた場合、第1四半期決算短信数値の信ぴょう性に疑義が生じることになるからです。ただし、監査報酬を極力抑えつつ信頼性の高い決算をしたい企業側と、監査時間を減らしつつ監査報酬を維持したい監査法人側のせめぎあいが発生しているものと推察します。

本日見た記事には「四半期報告書と同様の情報を、四半期決算短信で提供できるようにすること」「四半期報告書の廃止で軽減された社内のリソースを、何に振り向けるべきか考えること」が企業にとって重要、と書かれていますが、実際に四半期報告書と四半期決算短信を見比べたことがあるのか、四半期報告書で手間は減るが、まるで経理や経営企画が楽になるかのような記載であり、決算~開示実務をどの程度分かって言っているのか、投資家視点でしかものを見ていない発言だと少々憤っております。こんなもの廃止になったところで、情報開示が疎かになることはコーポレートガバナンス・コードもあり基本的に考えられないし、そのコーポレートガバナンス・コードのおかげで、決算も年を追うごとにやることが増えております。コストセンターは増員が容易でない中、利益や効率の飽くなき追求と業務の精緻化を継続的に求められており、この程度の簡素化が会社にとって大きな効果があるとでも思っているのでしょうか。

とは言え、個人的には少しでも簡素化になることは投資家としても大歓迎ですので、できれば、最終的に有価証券報告書まで全廃(決算短信等と統合)になれば、と思っております(有価証券報告書はハードル高いでしょうが・・・)。